
2026年の現時点でも、ロシアとウクライナの戦争は終結していません。また、イスラエルとアメリカ軍によるイランへの攻撃、ヨーロッパの移民問題や中国による台湾進攻の可能性も考えると、日本はこれからどうなっていくのか、大丈夫なのかと不安に思う人も増えてきています。
今回は、英語や外国語を学んでいる人や、仕事で海外と関係ある人、またそうではないけれど日本の将来が心配という人に向けて、今日本人が読んでおいた方が良い、国際情勢や国際関係に関する書籍を紹介します。
『サクッとわかる ビジネス教養 新地政学』
まずは、地域だけでなく地球全体から国際情勢や国際関係というものを考えるために、一度は読んでおいた方が良い「地政学」についての書籍から。「地政学」という言葉自体よくわからないという方のために、本書の「はじめに」の部分から、著者の言葉を以下に抜粋します。
地政学とは何なのでしょう。研究者によってさまざまな答えがあると思いますが、私は「国際政治を冷酷に見る視点やアプローチ」と考えています。多くの日本人が思うよりも、国際政治での国家のふるまいはとても冷酷で残虐です。ここでいう“冷酷”とはどういうことか、詳しいことは、本編を読んでいただければおわかりになるはずです。
日本は島国で、他国と海を挟んで随分と離れていますから、他の国のことに詳しくなくても当然の地理的状況ではあります。けれども、ビジネスの面でも安全保障の面でも、日々の生活で使う品物一つとっても、全く外国と関係せずに生きていくことの方が難しくなっている時代です。一人ひとりが、最低限の国際情勢や国と国の関係性を知っておくことは自身の身を守ることにもつながります。
日本、アメリカ、ロシア、中国に加え、イスラエルとパレスチナの問題や、イランとアメリカがなぜ対立しているのか、昔世界史の授業で習ったような気がする…といった部分も解説されています。イラストも効果的に使われていて、地理的・位置的な要因を視覚的に理解しやすい作りになっています。是非一度、国際関係や世界情勢を知る入門書として『サクッとわかる ビジネス教養 新地政学』を読んでみてください。
続いて、宗教や文化が異なる別の国の人を大量に受け入れるとどうなるのか、その実例を見ていきましょう。
『西洋の自死 移民・アイデンティティ・イスラム』
イギリス人ジャーナリストによる本書は、ヨーロッパの移民政策と文化的アイデンティティの喪失を批判的に論じた一冊です。ヨーロッパは大量移民を受け入れる一方で、自らの歴史や価値観への信頼を失い、結果として自ら社会を崩壊させていると警鐘を鳴らしています。特に重要なのは「多文化主義が統合ではなく分断を生む」、「メディアや政治家が移民問題への批判を差別として封じる風潮」という指摘です。
本書はまずイギリス国内でベストセラーになり、その後世界各国で翻訳され大きな話題となりました。なぜなら、タイトルの通り、ヨーロッパは移民政策で失敗してしまったからです。
ヨーロッパ各国の人たちは、キリスト教をベースにした文化や価値観を共有して生活しています。ところが、そこに文化や価値観が異なるイスラム教徒の移民・難民が大量に流入し、現地の文化や価値観に習おうとしなかった結果、現在の混乱を招いてしまいました。以前はヨーロッパでも、新しくやって来た移民や難民は、現地の文化に同化することが前提であったはずなのですが…。
日本人がこの本から学べることは、「ヨーロッパですら移民の受け入れに失敗してしまったのだから、日本は他国の失敗から学び、同じことはやめよう」ということです。
さらにイギリスでの具体例を知りたい人は、「イギリス ロザラム事件」というキーワードでネット検索してみましょう。そして犯人がどういった人たちだったのかを確認してみてください。
『移民 難民 ドイツからの警鐘 たった10年で様変わりしたヨーロッパ』
『西洋の自死』では、「2015年にドイツのメルケル首相が難民受け入れのメッセージを発したこと」が、この混乱の引き金であったと指摘されています。そのドイツの状況について詳しく知りたい場合は、川口マーン惠美さんの書籍をおすすめします。長年ドイツに住む川口さんが、移民や難民で苦しむドイツやヨーロッパの状況を何冊にもわたって解説してくれています。
特に『優しい日本人が気づかない 残酷な世界の本音 – 移民・難民で苦しむ欧州から、宇露戦争、ハマス奇襲まで -』では、「日本は嫌われても幸せなスイスとハンガリーを見習え」と具体的な国名をあげて日本がとるべき対応策が提示されています。
『西洋の自死』は日本語に訳された書籍のため、日本人が読むには少々読みづらいと感じる箇所もあるかもしれません。反面、川口さんの書籍は日本人にも読みやすい文章で綴られていますので、その点でもおすすめです。目次を見るだけでも、読まねばならないと思えてきます。
『目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画』
次に、政治体制や民族、文化が異なる人々が大規模に流入すると社会にはどんな影響があるのか、その具体例を見てみましょう。
『目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画』は、中国共産党がオーストラリアでどのように影響力を広げてきたかを、実名と具体例を交えて明らかにした告発書です。政治献金やスパイ活動、華僑ネットワークを通じて、オーストラリアの政治・経済・教育・メディアに浸透する手口が詳細に分析され、中国政府に批判的な人物が攻撃されたり、親中派が要職に就いたりする実態を描いています。
出版に至るまで複数の出版社が中国の報復を恐れて刊行を断念した経緯もあり、言論の自由への圧力もテーマの一つです。オーストラリアが中国の「静かな侵略」にどう対処したかは、外交や安全保障のあり方を考える重要な材料となります。
『見えない手 中国共産党は世界をどう作り変えるか』
『目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画』の続編に当たる本書『見えない手 中国共産党は世界をどう作り変えるか』では、中国がアメリカ、イギリス、その他ヨーロッパ諸国でどのように浸透工作をしかけているか、その事例を大量に明らかにしています。続編ではありますが、今作から読んでも問題ありません。巻末に補論として、日本人はどうすればよいかという対処法も掲載されているため、非常に参考になります。
この本では、ビジネスの分野だけでなく、地方自治体、シンクタンク、研究機関、孔子学院を含めた大学等教育機関や留学生に対して、中国共産党がどう働きかけているか、様々な具体例を知ることができます。中国共産党が、アメリカやヨーロッパ各国、オーストラリアと同様の手法を、日本に対しても行っていることもわかります。
以下に、補論「日本は目に見えぬ侵略にどう対処するか」から、一部を抜粋して紹介します。
その国の重要人物、つまり政治家やジャーナリスト、そして学者たちに、マスメディアで中国の視点で語らせるのです。中国がどのように統治され、中国がどのように考え、どのような立場にあるか、正当化する弁明を言わせて、現地の人々の視点を操作しようとしているわけです。
このような実例をたくさん挙げています。書いていて気づいたのは、オーストラリアであれ、イギリスであれ、(中略、)日本など、中国共産党によって影響力を発揮するために実行されている計画の青写真はすべて共通していることでした。(p.361-362)
『「目に見えぬ侵略」「見えない手」副読本』
日本人向けに、上記『目に見えぬ侵略』『見えない手』2冊のポイントをまとめた小冊子的な副読本も出ています。2冊の内容を40個の項目に分けて解説しているため、急いで要点を把握したい人は、最初にこの副読本を読むのも良い方法です。
この副読本だけでも、各国の政治家や著名な学者が金銭だけでなく名誉欲などの弱い人間心理を利用されていること、意図的に地方や地方議員が狙われていること、主要メディアと記者が弱みを突かれていること、経済や文化交流すらも利用されていることなど、具体的な事例を理解できます。
『1984年』
「ビッグ・ブラザー」、もしくは「ビッグ・ブラザーが見ている」という表現をどこかで見聞きしたことがある人もいるでしょう。その元ネタがこちら、ジョージ・オーウェルの『一九八四年』です。街中のテレビやマイクによって人々の行動が監視され、言論統制や歴史修正が行われる近未来を描いたSF作品で、今も世界中で読まれている名作です。
この小説が世に出たのは1949年なので、今読むには古いのではと思う人もいるかもしれません。しかし現代の私たちも、防犯用の監視カメラやネットに接続されたスマホなどによって、似たような監視社会を生きているとも言えます。そういったデバイスを通じて、誰かに見られている訳ですから。その監視カメラが中国製のために、以下のようなニュースも出ています。
【参考】「英議員67人、「中国製監視カメラ」の使用中止を政府に要求」
注意点としては、ディストピア作品の礎ともされる小説なので、面白い反面、読書後はあまり良い気分にはなれません。また、物語が本格的に動き出す前の部分にあたる第一部は、読み進めるのが苦痛に感じる人もいるかもしれません。しかし、第二部に入ると一気に面白さが増し、ページをめくる手が止まらなくなります。なぜ今でもアメリカを中心に世界中でこの本が読まれているのか、その理由をぜひ読んで確認してみてください。
『動物農場』
SFはちょっと苦手という人や、『一九八四年』を読み始めてみたけれど途中でやめたという人には、オーウェルのもう一つの代表作『動物農場』をおすすめします。
こちらは、人間を豚や馬、羊といった動物に見立て、ソ連のスターリンの独裁をモデルに、全体主義や独裁体制への疑問と批判を描いた寓話形式の小説です。寓話形式なので、文章自体はシンプルで読みやすいです。英語の原書も簡潔でわかりやすい英語で書かれているので、英語学習中の人は原書を読んでみるのもよいですね。
とある農場の動物たちが、人間の農場主を追い出して理想の国を作り上げようとする中、リーダーの立場に立った豚たちが独裁者に変貌していきます。より良い未来のために、体に鞭打って働いても、それらが全て悪い方に転がっていきます。人間社会を例えているだけに、何とも言えない気分になります。何より、ラストの恐ろしさ。この恐ろしさを物語の中だけに留めておくためにも、ぜひ一読を。
実体験に基づいた筆者たちの考え
北米やアジア、ヨーロッパで実際に長期間仕事をしたり勉学に励んだりした経験から、最終的に我々プロジェクトメンバーは本来異なる言語を話していた人たちと理解しあえることはないという結論に至りました。言語が異なるということは、文化や常識も異なるからです。さらに元々の宗教まで違うとなると、摩擦が増えることは明らかです。
アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのように、現地の先住民を排除もしくは支配しない限り、多数の移民と上手くやっていくことは現実的には非常に難しいです。
※注意点
ここで紹介した書籍は、筆者はいずれも紙の本で内容を確認しています。Kindle版の場合は違いがあるかもしれません。特に『1984年』と『動物農場』は、Kindle版だと序文などが未収録と耳にしたので、Kindle版での購入を検討している人は、内容に違いがないか事前に確認することをおすすめします。
